【2.「9つの重要テーマ」の戦略的補強】
① 豊かな自然や環境の保全・充実 | ··· | 自然の力を高め、環境の魅力を磨く |
② 課題を解決し、未来を拓く人づくり | ··· | 人の可能性を啓き、力を高める |
③ 地域コミュニティモデルの進化 | ··· | 支えあい、共に生きる自治の基盤を |
④ いのちを育て・守り・支える | ··· | 安心して暮らせる社会システム・制度へ |
⑤ 「分かち合いの社会」の創造 | ··· | 協働の進化、誰もが負担・受益する社会 |
⑥ 「観光」による地域経済活性化 | ··· | 「光」の強化、地域内循環、関係人口拡大 |
⑦ 重要なまちづくり案件の適切な推進 | ··· | 施設効果の最大化と、民間開発との整合 |
⑧ インフラ・公共施設の維持更新と再配置 | ··· | 縮減・複合化・高機能化・長寿命化 |
⑨ 基礎自治体としてのあり方の見極め | ··· | 地域経営力強化、広域連携の拡大 |
小田原の魅力と豊かさの象徴であり、市民のいのちと健やかな生活を支える天然の装置であり、地域経済活動に必須の素材とフィールドを提供している、世界に誇るべき森・里・川・海オールインワンの自然と環境を、第3ステージにおいて取り組んだ様々な成果を踏み台に、更に磨きをかけていく。
それにより、自然と調和した小田原の都市イメージの創造、市民の心や身体の健康増進、食料の安定的生産と地場産業のさらなる育成、再生可能エネルギーの地域自給、潤いと安らぎのある生活空間づくり、子どもたちがたくましく育つフィールドの確保を進める。
平行して、「地域循環共生圏」の活動を通じ、そうした環境活動の担い手である地域内諸団体の活動を支援すると共に、近郊都市部からの関係人口を増やし、自然や環境が抱える課題解決も進める。
全体として、「いのちを守り育てる地域自給圏」の形成を明確に打ち出し、短期的視点ではなく、50年・100年を見据えた視点で取り組みを進める。
人生のそれぞれのステージにおいて、市民が持っている「可能性」や「学び・チャレンジへの意欲」を最大限引き出し、そのエネルギーや能力が地域課題の解決に向かうよう、様々な学びの機会と地域の現場をつないでいく。
子どもたちの学びと育ちの場である幼児教育・保育・学校教育の現場において、教科学習に加え、社会課題についての学びや地域社会との関係づくりを進め、未来を担いうる、問題解決能力の高い人材の育成を目指す。また、「あれこれ体験」「ワールドキャンプ」「市民活動」「創業支援」「シニアバンク」、そして自治体SDGsモデル事業の中核に位置付ける「おだわら市民学校」など、これまでも取り組んできた小田原ならではの「人づくり」を、より強力に、より幅広く、そしてより進化した形で推進し、「持続可能な地域社会」に向けた課題解決の原動力である「人の力」を極大化する。
世代から世代へと襷(たすき)がわたるように、様々な活動の担い手育成をあちこちに仕込んでいくことで、学びが実践につながり、実践の深まりが次の学びへと巡っていくような良循環を形成する。
市内26の全自治会連合会エリアで地域コミュニティ組織(まちづくり委員会)が立ち上がっていることは、「持続可能な地域社会」の確立を目指すうえで、何にも代えがたい市民自治の基盤であり、小田原の財産である。この営みを磐石にするべく、地域コミュニティが抱える様々な課題の解決を協働で進めると共に、人的・財政的な補強も含め、行政としての支援と伴走体制を強化する。
特に、活動拠点の確保、地域コミュニティ側の担い手確保および育成、活動領域と役割(ケアタウン、防災、子ども会など)の整理、小学校区との整合などを進める。また、地域の未来を担う子どもたちや、子育て現役世代の関わりを広げるべく、祭礼や郷土芸能など「ふるさと」意識を高める活動への支援を進める。
「いのちを大切にする小田原」をまちづくり目標の筆頭に掲げ取り組んできた中で、妊産婦から高齢者まで、様々な「いのち」を支えるための施策については、一通りのラインナップを揃えるに至っているが、そこで提供するサポートの水準はまだ不十分である。それら一つひとつの施策領域における「質」の向上をはかり、サポートを充実させることにより、妊娠、出産、育児、子育て、健康づくり、医療、障がい、生活困窮、介護など、市民が人生の様々なステージにおいて生きづらさや不安を感じることなく、安心していつまでも笑顔で生活できる環境を整える。
行政サイドの制度・仕組み・体制を充実させるのはもちろんのこと、市民が生活する地域コミュニティ・支援する各種民間団体・サービスを提供する福祉医療関係者らのそれぞれの実践を支援し、それらの構成員がしっかりと連携した地域包括ケア体制の拡充を進め、全国で注目されている「ケアタウン」モデルを完成させる。
地域総ぐるみでの子育て、サポートが必要な人たちへの支援、地域を支えてきた高齢者のケア、身近な生活環境の整備、災害や犯罪から地域を守る活動など、地域には様々な課題がある。だが、人口減少による税収減の中で、諸課題への行政の対応力には限界がある以上、行政に加えて、当該分野にかかわりのある市民、さらには未来を共にする広範な地域住民が共に力を合わせていく「協働」の一層の拡がりが不可欠である。
すでに小田原では「ケアタウン」や「スクールコミュニティ」など、様々な分野で協働が進化を遂げているが、担い手の確保や育成、市民の意識啓発などを更に進めていく必要がある。
一方、協働のような「人のはたらき」だけに頼れば、それは政策の地域への丸投げと紙一重となる。財政面の対応が必要な領域については、全国市長会でも提案されている「協働地域社会税」のような新たな財源確保の仕組みなどの可能性を研究し、国や他の自治体とも連携しながら、持続可能な「分かち合いの社会」の実現を目指す。もちろん、受益と負担のリバランスは、規律ある行財政運営の徹底とセットでなければならない。
地域資源に恵まれた小田原の地域経済の足腰をより強化するべく、経済活動の基盤とも言える農業・林業・水産業の産業としての振興、さらにはそれらから素材を得て成り立つ食品加工業や木工業、各種ものづくり産業などを更に充実させていく。地域に根ざしたこれらの多彩な産業の現場は、そのものが魅力を発信しうる「光」であり、観光資源としても位置づけが可能で、せまいエリアに交通手段が発達している小田原の強みを活かすこともできる。
あわせて、それらの産業における素材やエネルギー、人的資源の地域内調達を促進し、経済の地域内循環を高めると共に、隣接する産業分野との連携による相乗効果や高付加価値化などを目指す。
さらに、近郊都市(東京・横浜・川崎など)とのつながりを強化し小田原ファンを増やすと共に、各産業の現場に足を運びコミュニケーションを深める「関係人口」の拡大を進め、地域の更なる活性化を実現する。都市部からのアクセスの良さと、居住地としての快適性、市民ホールや駅周辺再開発などによるアメニティ向上などの魅力を外に向けてより一層発信し、都市部からの移住、あるいは2地域居住やサテライトオフィスなどの拡大を進める。
地下街はハルネ小田原として定着し6年目。お城通り再開発事業は前半が東口駐車場およびUMECOとなって5年目、後半が広域交流施設「ミナカ小田原」として2020年秋以降にオープン。市民ホールは既に着工し2021年9月にオープンと、いわゆる三大案件はすべて成就の見通しとなった。今後はこれら施設の効率的な運営と、その施設がもたらす周辺地域の振興や活性化、文化と経済が相互に高め合う良循環の形成、市民力の更なる向上といった成果にしっかりとつなげるよう、個々の施設運用効果の最大化と、それらの連携による市域全体での効果創出を同時に達成する。
民間部門において進む、新規工業団地の開発、街なかの再開発案件、企業撤退跡地や少年院跡地の利活用なども、全市的なバランスに鑑みながら取り組みを支援していく。
老朽化の著しかった斎場の新設、環境事業センターの大規模修繕による長寿命化など、市民生活に不可欠の大型整備案件も完了するなど、主要な公共施設の整備は一段落した。今後は新病院の建設を筆頭に、消防署所や学校給食センターの再整備など、市民のいのちを守る拠点整備を着実に進める。
中長期的な財政見通しが厳しさを増す中、市有の公共施設の老朽化にまつわる更新投資の抑制が必要である。既に、市民の皆さんの理解と協力を得ながら「公共施設再配置基本計画」を取りまとめおり、それに基づいて公共施設の総量縮減を進めつつ、統廃合をしつつも機能低下とならぬよう、複合化や機能配置の工夫をはかっていく。
道路・橋梁・上下水道などのいわゆる社会インフラについては、それぞれの長寿命化/維持管理計画に沿って、計画的に整備を行いつつ、長寿命化を進めて財政負担の軽減を図る。
南足柄市との2市協議が不調に終わり、「合併」「中核市移行」「連携中枢都市圏」のシナリオが不可となったことから、全庁を挙げての行財政改革に取り組み、中長期にわたる行財政運営の基盤を強化していく。その際、従来型の行政運営にとらわれることなく、民間の資本・ノウハウの積極的導入により、事業費の圧縮による財政負担の軽減、使用料や賃料収入による歳入の確保など、自治体経営に資する手法については積極的に採用する。
広域行政については、小田原市のみならず近隣市町においても財政運営の厳しさが増すと共に、広域圏での経済・環境・防災分野などにおける連携の必要性も高まることが予想されるため、引き続き広域行政の枠組みを守り、圏域としての発展に向け連携関係を強化していく。