加藤けんいち

おだわらを拓く力(加藤けんいち後援会)

Ⅰ. 第3ステージの総括(2016.5~2020.4)

 2016年5月、小田原市では59年ぶりに無投票となった市長選挙において、小田原市長としての3期目の任期を市民のみなさんに託して頂きました。私は、「無投票」を、それまでの市政運営手法とめざすべき都市ビジョンに対する「信任」と重く受け止めました。そして、市民ホールやお城通り再開発の着工など、2期8年で積み上げてきた課題解決の取り組みを着実に前進させ、また、マニフェストでお示しした「第3ステージの取り組み指針」のテーマ「持続可能な地域社会モデル」の実現に力を注ぎました。特に、人口減少・少子高齢化・社会インフラ老朽化・地域経済弱体化などの課題を克服すべく、市民との協働をより進化させ、様々な先駆的事業に果敢に着手してきました。
 以上の方針のもと、第5次小田原市総合計画「おだわらTRYプラン」の後期基本計画(平成29年度~令和4年度)では、「持続可能な地域社会モデルの実現」を柱に据え、「取り組み指針」で掲げた9の重要テーマをそのまま「9つの重点テーマ」としました。

 主に取り組んだ政策領域をあげてみます(実施した個別事業はかなりのボリュームになるため、後段に資料として詳述します)。

  1. 豊かな自然や環境の保全・充実:森・里・川・海がひとつらなりという特徴を活かし、多様な主体の連携による自然環境の保全と再生、エネルギーの地域自給に向けた取り組みの推進、いのちを支える食の生産基盤の強化
  2. 課題を解決し、未来を拓く人づくり:地域資源を活かした様々な世代の学びの場づくり、創業者の発掘・育成・支援の一元的な展開、プロダクティブ・エイジングの推進
  3. 地域コミュニティモデルの進化:目指すべき地域コミュニティ像、子どもの多様な居場所の連携と進化
  4. いのちを育て・守り・支える:妊娠期から子育て期に至る切れ目ない支援体制の整備、未病を改善する取り組み、これと連携した市民の健康増進活動(運動・食)の促進、地域包括ケア体制づくりとケアタウン構想の推進
  5. 「分かち合いの社会」の創造:行財政改革の推進、「分かち合いの社会」づくりの検討、その展開
  6. 「観光」による地域経済活性化:観光戦略ビジョンに基づく観光まちづくりの推進、観光分野との連携などによる農林水産業・ものづくりの振興、2020東京オリンピック・パラリンピックなどを契機とした活性化(経済・文化・スポーツ)、しごとと暮らし(住まい)をつないだ定住促進
  7. 重要なまちづくり案件の適切な実現:小田原駅・小田原城周辺のまちづくりの推進、まちなかの賑わい創出や回遊性向上に向けた街並みづくりの推進
  8. インフラ・公共施設の維持と再配置:上下水道・道路・橋梁など社会インフラの着実な修繕・更新、公共施設再編に向けた計画策定と老朽化施設の長寿命化の取り組み推進
  9. 基礎自治体としてのあり方の見極め:小田原市・南足柄市「中心市のあり方」に関する任意協議会による広域連携制度の検討・協議(合併、中核市移行、広域連携)と、検討作業で得られた成果の行財政改革での活用

 これだけではありません。154に及ぶ「個別政策分野に対する具体的補強」についても、そのほとんどが具体的な事業として実施されました。その結果、後期基本計画前半3年間の事業進捗率はきわめて高く、目標達成が8割を超える事業は、あと1年を残して、すでに全体の80%に達しています。また、3期12年全体を振り返れば、就任当時に大きな課題としてあった3大案件も、ほぼ解決を見ることができました。

 ここで強調したいのは、これらの果敢な取り組みが財政を健全化しながら進められたことです。全会計における債務総額は、就任前の平成19年度末の1,492億円から平成30年度末には1,082億円へと410億円も削減することに成功しました。また、そして貯金である財政調整基金は、15億円から61億円へと46億円を積みますことができました。財政面の健全性をしっかり高めながら、数々の取り組みが進められたのです。

 市長に就任した当初、マニフェストに掲げた政策は、まだ「市政運営や地域の目指すべき姿」を高らかにうたいあげるに止まっていました。ですが、3期12年の歩みを通して、その思いは、まちのカタチや賑わい、地域づくりのめざましい進展、市民と職員の協働、効率と健全性を追求した行財政運営といったぐあいに、小田原の有形・無形の姿として実を結びつつあります。この努力のいずれもが、これからの時代において極めて重要なポイントである「持続可能な地域社会であること」の土台をなすものです。多くのみなさんと共に歩んできた道のりは、当初の目的の成就に向かって着実に前進していると言えましょう。

 実際、私たちの歩みは、国の注目するところとなりました。2019年には「SDGs未来都市」に、更にその中でも先進的であるとされる「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。また、環境省の中核的取り組みである「地域循環共生圏」などのモデル事業にも採択されています。2019年度に両方に採択されたのは全国で小田原市だけです。日本全国が同じような課題に直面する中で、その解決に向けた先導的な役割を果たしうる自治体として、小田原市は期待を集める存在となりつつあります。これまで共に歩んで頂いた多くの市民のみなさん、理解いただき事業を進めて頂いた議員のみなさん、そして苦労を分かち合い汗を流してくれた市職員のみなさんに、深く感謝するものです。

 しかし、その一方で、わが国を取り巻く状況は、私が市長に就任したときに比べ、はるかにその困難さと不透明感を増しています。

 きびしさを増す人口減少、高齢者の増加、扶助費の増大、地域社会の抱える課題の複雑化、子どもたちの健やかな成長に影を差す社会環境の変化、経済格差が生む教育格差、社会に深く冷たく広がる分断、課題解決を担うべき人材の不足、世界各地を脅かす気候変動・・・。さらには、自国第一主義や保護主義の台頭、高まる地勢的リスクなど国際情勢も不安定さを増しています。Society 5.0に象徴されるように、情報技術の高度化に期待が注がれていますが、それが現下の難しい課題を本質的に解決できるのか、今のところ定かではありません。

 社会状況が大きく変わりつつある、「歴史の峠」と言われる時代にあって、いくら豊かな地域資源に恵まれているとはいえ、本当に小田原は「持続可能な地域社会」足り得るのでしょうか。私たちはしっかりと自問し、現実をみつめて、歩むべき道を誤ることなく選び取っていかねばなりません。その歩みを確かなものとするべく、より一層の知恵と力を集め、必要な補強を行い、これまで築き上げてきた市民力・地域力・協働といったかけがえのない「小田原の宝」を更にしっかりと育て上げながら、揺ぎない段階へと小田原を導く。それが、次のステージで私たちが果たすべきミッションであると考えます。

 今を生きる私たちのために。そして、未来を受け継ぐ子どもたちのために。