「新しい小田原」への歩みを第3ステージに進めるに当たり、私たちが持つべき問題意識は、大きく2つあると考えます。
ひとつは、私たちの周りに現実として山積している、諸課題の具体的解決に向けた取り組みを、レベルアップを図りながら継続していかねばならない、ということです。人口減少、急速な少子高齢化、各種社会インフラの一斉の老朽化、地域経済の弱体化、子どもたちを取り巻く諸問題、公共部門の財政難など、私たちの前には目まぐるしく様々な課題が現れ、日々その深刻度を増す中、これまでにも、この地域が有する様々な資源を総動員し、知恵を絞って、私たちは現状に向き合ってきました。そして、その過程を通じ、様々な協働の仕組み、地域コミュニティの充実、民間の多彩な活動などが育ち、総体として「問題解決能力の高い地域」へと、確実に歩んできています。
この歩みを、引き続き手を緩めることなく進めていくのは当然なのですが、立ち現れ深刻度を増す課題へ、ただ受動的に対応し、当座をやりくりして凌いでいくという構えだけでは、持続可能な地域社会を築き上げるのは難しいでしょう。
そこで、もうひとつ、私たちがしっかりと持つべきであるのは、「人口減少社会」「縮減の時代」「危機の時代」といわれるような現在の時代と社会の向こう側に築かれていくべき、あるべき地域社会の姿をしっかりと捉え、その目標に向かって、明確な意識を持って歩んでいく、という姿勢であると考えます。課題解決という「受動」から、持続可能な地域社会モデルの実現という「能動」へと、取り組みの力点を移していくのです。
いのちを支える豊かな自然環境がある。自然と共存し人々と手を携えていく意識と力をもつ人間が育っている。基礎的な社会単位である地域コミュニティの絆が結ばれている。人が生まれ、育ち、暮らし、老いていく、その営みを、社会全体が敬意を持って支えている。喜びも苦しみも、みんなで分かち合う文化や仕組みを、社会として共有している。地域の資源を活かした、地に足の着いた経済活動が根付いている。暮らしや経済を支える様々な社会資本は、計画的にメンテナンスが施され危なげない。それら地域の運営をつかさどる基礎自治体は、地方政府と呼べる総合力と、市民一人ひとりへの細かな配慮を併せ持っている・・・。そんな地域社会こそ、真に持続可能であると言えましょう。
幸い、小田原は、そのような地域社会モデルを現実のものとすることができる潜在力を有していますし、またこれまでの歩みはまさにそこに向けられてきました。これまでなかった協働の立ち上げやまちづくりへの参画を伴ったその道のりは、ある意味負担感や苦労を伴うものであったかもしれませんが、一方で、その先に見えるであろう、あるべき地域社会の実現への期待や手応えを、このプロセスに関わってきた少なからぬ人たちが感じていると信じます。
第3ステージの目標は、直面する当座の課題解決にとどまらない、持続可能な地域社会モデルの実現を目指しての、私たちの意識と行動の「進化」にあります。その観点から、自然環境との共生、育てるべき人間の能力、地域コミュニティの役割、いのちを守り育てる仕組みと文化、分かち合いの社会、地域の資源を活かした経済の姿、社会資本の健全な維持、基礎自治体の在り方などについて、到達点を明確にしながら、具体的なアクションに取り組んでいくべき局面です。
将来都市像として定めた「市民の力で未来を拓く希望のまち」は、すでに私たちの周りに実現し始めています。しかし、まだその感触はささやかなものであり、手を離せば遠ざかってしまうかも知れません。ここまで進めてきた歩みを、揺ぎない現実としての「希望のまち」につなげるべく、オール小田原で力強く道を拓いていきましょう。