「新しい小田原」を目指す市政運営と地域づくりは、平成23年4月にスタートした小田原市第5次総合計画「おだわらTRYプラン」および平成24年1月に施行された「小田原市自治基本条例」といった、新たな市政推進枠組みのもと、市民力・地域力を活かし、市民と行政が意欲的に協働を進め、着実に進展がはかられてきました。人口減少、少子高齢化の急速な進行、公共施設や社会インフラの一斉の老朽化、地域経済の弱体化、公共部門の財政難といった、困難な時代の只中にあって、小田原では恵まれた地域資源を活かした「持続可能な市民自治のまち」が目指され、問題解決能力の高いまちづくりが取り組まれてきたところです。
おりしも、東日本大震災という未曾有の大災害が発生し、私たちが築き上げてきた社会システムや経済活動の基盤、さらには暮らしや営みを支える地域の絆のあり方が深く問われることとなった中、いのちを大切にし、地域資源を活かし、コミュニティの絆を深めるといった、小田原において進められてきた市政運営や地域づくりの方向性が間違っていなかったと、私たちは確信を深めてきました。
2008年5月から2012年4月までの第1ステージでは、「新しい小田原」づくりの枠組みの成立、市民と行政の協働の本格始動、地域コミュニティ単位でのまちづくりの活発化、民間レベルでの様々な取り組みの活発化が進み、画期的な市民参画手法や、民間の力を生かしたまちづくりなどが、高い評価を受けるに至りました。また、三大案件といわれる大型事業の実現への道筋も開かれ、東日本大震災を受けて安全安心のまちづくりやエネルギー自給への取り組み着手なども進められるなど、「新しい小田原」を築き上げていく土台の作業が進みました。
そのような流れを受けた第2ステージでは、おだわらTRYプランの着実なる遂行を基本に、「7+1の重要テーマ」を設定すると共に、102項目にわたる「個別政策分野への具体的補強」を掲げ、その着実な推進が図られてきました。
まず、おだわらTRYプランの進捗は、平成26年度時点で、目標達成状況が7割を超える事業が、全体の実に95%を占めており、着実に実施が行われています。
次に、「重要テーマ」ごとに、主な成果を挙げてみます。
さらに、「個別政策分野の具体的補強」については、推進中のおだわらTRYプランにおける実施計画などと繋げてその着実な遂行が図られており、多くの補強策は実施に移されています。
このように、第2ステージに掲げた各種取り組みについては、高い割合で実施に移されており、目的とする課題解決への着手は大きく進んできました。そしてその中では、地域の力・市民の力は、より多様に、そしてより活発に発揮されるようになっています。加えて、市民と行政の協働は、意識面・行動面ともに様々な分野で定着しつつあるといって良いでしょう。
重要なことは、これらの様々な取り組みの結果でもある財政状況の推移ですが、全会計における市債および債務負担行為の残高総額は、第1ステージ前の平成19年度末の1492億円から、第2ステージ終了に近い平成27年度末見込みで1164億円へと、実に328億円削減となりました。さらに、家計の預貯金に該当する財政調整基金は、平成19年度末で15億円だったものが、平成27年度末には55億円と、40億円もの積み増しが行われるに至っています。このように、第1・第2の両ステージを通じた取り組みは、財政面でも健全性をしっかりと確保・改善しつつ遂行されてきたものです。
しかしながら、取り組むべき課題は依然として山積しています。
協働による課題解決のモデル作りや、地域コミュニティを単位とした住民自治への取り組み、様々な主体による地域経済活性化への動きなどは、まだその途上であり、揺ぎないものへと仕上げていくべき段階にあります。未来を担う子どもたちの教育環境の整備や、子育て環境の更なる充実は喫緊の課題です。急速に進む高齢化に伴う社会的コストを抑える上でも、また貴重なシニア人材に元気で活躍していただくためにも、高齢者向けの各種施策の充実が急務です。
3大案件のうち地下街とお城通り再開発は具体化したものの、芸術文化創造センターは入札不調による難しい状況を乗り越えねばなりません。斎場・ごみ焼却施設・市立病院など市民生活になくてはならない公共施設の老朽化対策が待ったなしとなっているほか、道路・上下水道・橋梁などのインフラの着実な更新が必要です。
さらに、都市制度をめぐる国の様々な動きも視野に、県西地域の中心的役割を果たしてきた小田原市の、基礎自治体としてのあり方について、中核市移行や合併なども視野に、本格的な検討作業を進めるべき局面に至っており、腰を据えた取り組みが必要です。
このように、第1ステージからの流れを受け、第2ステージでも様々な取り組みが大きく前進した一方で、この先へ更に進んでいく上での課題はまだ多く残っていると共に、時代と社会の趨勢のなかで、基礎自治体としての更なるチャレンジが求められている状況にあります。