加藤けんいち

おだわらを拓く力(加藤けんいち後援会)

⒈ 第1ステージの総括(2012.5~2016.4)

 「新しい小田原」を目指す市政運営と地域づくりは、「いのちを大切にする小田原」「希望と活力溢れる小田原」「市民が主役の小田原」を三大指針に掲げ、「持続可能な市民自治のまち」を創るとの方針で進められてきました。
 平成 20年以降は、リーマンショックによる世界的な経済不況の影響からの大幅な税収減と地域経済の低迷、政権交代後の国政レベルにおける不安定な政治情勢、東日本大震災という未曾有の国難による国民生活および経済活動への大きな影響などが続けて発生、市政運営や地域づくりにおいても先行きの見通しの立てにくい、しかも厳しい行財政運営を強いられる状況が続いています。 しかし、「新しい小田原」の具現を願う多くの市民の主体的な参画によって、様々な取組みは着実に進められ、小田原の持つ可能性が次第に形に現れつつあると共に、山積する地域課題の解決の方向性が見出されつつあります。

この 4年間に小田原で進んだことについて総括すると、大きく以下の 4点にまとめられます。

 第一は、「新しい小田原」を創っていくための枠組みが成立したことです。 「新しい小田原」の設計図であり工程表でもある、画期的かつ本格的な市民・職員の参画手法によって策定された新総合計画「おだわらTRYプラン」。また、「新しい小田原」づくりを進める上での原理原則と基本ルールを明確化した、「小田原方式」と呼ばれるユニークな検討手法が評価された自治基本条例。更には、小田原では初めてとなる、25の自治会連合会エリアごとに市民自身が取りまとめた「地域別計画。この3つが成立し動き出しており、「新しい小田原」への軌道は明確に敷かれました。

 第二は、市民と行政が協働で課題解決を進めるための方法が見出されてきたことです。 高齢者や障がい者、小さな子どもたちなどを地域でお互いに支えあうための地域モデル「ケアタウン」。子どもたちが生きる力を身につけるよう、地域総ぐるみで子どもたちを見守り育てるための地域モデル「スクールコミュニティ」。身近な自然環境を地域住民自身が守り育てる「環境再生プロジェクト」、可燃ごみの 4割を占める生ゴミを堆肥化し、ごみ減量と資源化を進める「生ゴミ堆肥化プロジェクト(いきごみプロジェクト)」など、市民の積極的な参画と、知恵や力の持ち寄りによって、協働で課題を解決する動きが進みました。

 第三は、地域コミュニティ単位でのまちづくり活動が活発化してきたことです。
 「持続可能な市民自治のまち」における、自治の基本単位として.も重要なものは、地域コミュニティです。小田原には、小学校区とほぼ重なる形で 25の自治会連合会のエリアがありますが、それぞれに人口も年齢構成も、産業も、地勢や歴史も異なり、それゆえにはっきりした個性を持っています。これら 25の地区では、これまでにも多彩な活動が行われ、その結束は元来とても強固ですが、新たに「地域別計画」が策定され、更にはそれに基づく地域コミュニティ活性化事業も始まり、また各種モデル事業の受け皿としても位置づけられるなど、地域コミュニティの役割と活動はここ 4年間で急速に高まってきました。加えて、東日本大震災を受けての地域防災活動の本格化によって、地域の結束は一層強まりつつあり、課題解決を可能にする様々な構成団体の連帯も強化されてきています。

 そして第四は、民間レベルでの様々な取組みが活発化してきたことです。
 元来小田原は市民活動などが活発な地域ですが、まちづくりや地域経済の分野で、その存在感は高まっています。小田原の食材や地場産業の技を見せる上で大きな力となった「小田原どん」。民の力をエンジンにして豊かな地域資源を活かした経済活性化を目指す「無尽蔵プロジェクト」。豊富な食材などを集め中心市街地に賑わいをもたらす「街なか市場」や「小田原マルシェ」。長年取り組まれてきた早川地区のグリーンツーリズム事業と、著名なパティシエである鎧塚俊彦氏とのコラボレーションである「一夜城ヨロイヅカファーム」。市内の芸術文化関係者たちの企画により実現した「アーティストインレジデンス」。小田原の森林再生と木材活用が、被災地支援に繋がった「報徳の森プロジェクト」など、枚挙に暇がありません。これらは、民間の皆さんの自発的かつ主体的な事業推進力に加え、それらを支える行政側の支援がうまく重なって実現したものであり、益々活発化する兆しを見せています。

 このように、「新しい小田原」の基層をなす様々な取組みは着実にその実体を作りつつあり、新総合計画における平成 22年度「地域づくり総務大臣表彰」、無尽蔵プロジェクトにおける平成 23年度「日本計画行政学会計画賞」.優秀賞など、外部からも高い評価を得てきたところです。 また、この間、小田原市行政の懸念材料であった市債(借金)の縮減に向けて、大型事業への取り組みを控えると共に、徹底した緊縮財政の継続を行ってきました。その結果、市債および債務負担行為などの総額は、平成 19年度末の約 1490億円から、平成 23年度末には約 1260億円となる見込みであり、4年間で約 230億円の縮減を達成、財政の健全化が進みました。

 一方、長年の懸案であった、いわゆる三大案件といわれる「市民ホール・小田原地下街・お城通り再開発」の大型事業は、事業構想からの根本的な作り直し作業が市民参画にて着実に進んでいますが、建設や再開などの段階に達していないため、街が目に見えて変わってきたとの市民の実感に至っておらず、このことによって「新しい小田原」への歩みが成果として認識されにくい状況にあるのも事実です。
 また、ここ 2年ほどで顕在化もしくは発生した市役所の不祥事によって、市役所内部における業務の不適切さやずさんさ、職員倫理の問題や職場におけるコミュニケーションの問題などの存在が明らかになり、市民からの信頼を著しく損ねることとなりました。これまで、様々な協働の取組みを通じて培ってきた、市民と行政との信頼関係を修復することが急務となっています。

 そのような中、東日本大震災の発生によって小田原に急浮上した津波避難対策の必要性などから、市民の誰もに関わる「いのちを守る」ための取組みが、全市を挙げて取り組まれています。とりわけ、海抜の低い沿岸部などにおける避難ルート策定や津波避難ビル確保のための作業において、市民と職員の共同作業などが着々と進む中、信頼関係の回復と強化が図られているところです。

 このように、「新しい小田原」への歩みは、様々な形やレベルでの市民参画と協働によって、着実に進んできているものの、まだ多くの市民が実感を持てる段階には至っていません。新総合計画に位置づけた様々な取組みや、地域資源を活かした活性化事業など、その多くはまだ途上であり、「成果」として見える形になり、かつ取り組みが軌道に乗るまで、更なる強力な推進が必要な段階にあります。