4つの重要課題への対応
⒈ 小田原城周辺のまちづくりビジョン
小田原城周辺は、主に4つの性格をもつ地域で構成されています。まず、⑴ 広域のターミナルである小田原駅周辺。⑵
その周囲に発展してきた中心市街地たる商業地。その外側に、⑶ 歴史と文化、なりわいを宿すかつての城下町。さらに、⑷
街をとりまく海・川・丘・山。これらが、狭いエリアに重層的に存在するのが、小田原の特徴です。それぞれに、小田原を元気にしてゆく上で、他には担えない役割があります。まちの構造を活かし、それぞれの場所に相応しい役回りを与え、回遊性に十分配慮するなどして、小田原の可能性が最大限に発揮されるよう、まちづくりを進めることが大切です。3つの案件については、以下のように位置づけます。
【城下町ホール建設計画は、利用価値が高く市民に愛されるものへ転換します】
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現計画は、小田原のシンボルである城址景観に馴染まず、音楽ホールとしても劇場としても、また市民文化活動の拠点としても、致命的欠陥を抱えています。音楽、舞台、展示、各種イベントに便利な、多くの市民に素直に歓迎される、利用価値の高い市民ホールを目指します。
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市民・専門家・職員による検討委員会を立ち上げ、「市民主体による文化創造の拠点づくり」を主題として、本格的かつ集中的な検討プロセスに入ります。2年を目標として、再検討、設計案の策定、事業化の確定を行います。
- 現在、建設の事業主体に予定されている神奈川県企業庁との関係性は継続し、真に市民に歓迎される事業案への差し替えについて了解を求め、本事業への事業資金枠の確保を目指します。
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具体的な対案については新たな検討委員会の答申を待ちますが、現段階で最も本事業の趣旨に適い、また小田原駅周辺の活性化に貢献する案として、お城通り再開発計画の予定地区に用地を変更することを提案します。その際、遠くない将来に一体化が進められる2市8町の広域での役割分担を視野に、新たなホールの機能および規模などの再設計が必要です。
- 小田原市の現在の財政状況を踏まえ、ムダのない合理的な設計によって、現在63億円と見積もられている建設総額を大幅に圧縮することを目指します。
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現在の計画予定地は、小田原城の正面玄関であること、小田原城周辺の観光回遊ルートの中心に位置することから、小田原の地域経済に最大限貢献できる立地活用を実現するべく、歴史博物館/美術館/図書館/物産センターなど、恒常的に地域内外からの来訪客を迎え入れることの出来る用途が望まれます。そのための検討委員会を民主導で同時に立ち上げ、可能な限り早期の事業化を目指します。
【お城通り地区再開発計画は、公共性と市民利益を考え、事業内容を見直します】
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小田原駅前のきわめて貴重な市有地を、50年間、特定の民間事業者による商業施設等の運営用途に、市況の半値程度の賃料で貸付けてしまう現計画は、公共資産の保全と市民への利益還元、小田原の顔となる駅前の空間価値の最大化、駅周辺商店街への影響などを考えれば、市として推進すべき内容ではありません。公共性が高く、小田原の魅力の最大化を実現し、地元商店街との共存共栄が可能となる事業内容への転換が必要です。
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最適の事業案については、地権者、周辺商業者を含めた検討委員会によって検討を急ぎますが、公共性・小田原らしさの実現・商店街との共存共栄の視点から、現段階で最も実現性および可能性のある事業案として、新たな市民ホールを核とした広域交流拠点づくり事業案を提案します。その施設群に付随する建築物の中に、既存地権者の権利床を確保していきます。
- 当初よりのこの地域の役割に基づき、神奈川県西部および富士箱根伊豆地域の真の交流拠点となるよう、広域交通のターミナルとしての役割と、各方面からの交流人口獲得機能に十分留意します。
- 新たな建造物の設置に当たっては、駅前デッキ上から天守閣方面への眺望を極力生かすよう、一部地中化および低層化に配慮します。また、地下化などにより、可能な限りの駐車台数を確保します。
【地下街は、市民及び来訪者の活動・交流拠点としてすぐに活用を開始します。】
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市内全域と公共交通で結ばれ、雨にも濡れずに来訪できる、駅前の貴重な空間である地下街については、全市民の活発な利用が行われるような、市民に必要とされる機能配置を考える必要があります。周辺商業の活性化と連動できるよう、民間主体の事業化検討委員会を至急に立ち上げます。
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具体的な利活用案については検討委員会の答申を待ちますが、有力な事業案として、シニア層を対象にしたアクティビティセンター(シニアが元気に活動してゆく為の、学習及び交流施設)および、外部から小田原を訪れる観光客やビジターの拠点施設化、そして、現在狭いスペースで運営がされている市民活動サポートセンターの拡充設置などが考えられます。
⒉ 地域医療体制の立て直し
地域医療を共に担う民間医療機関との十分なコミュニケーションの上に、民間医療機関と市立病院の役割分担と協力体制を構築し、地域としての医療体制の安定化を目指します。その中で市立病院は、民間医療機関との相互補完的役割を果たしながら、市民の基幹病院として急性期医療・高度専門医療および救命救急医療の部門へ特化を進めます。経営の合理化と業務体系の見直しなどにより医師や看護師の勤務状況を改善、スタッフの確保を急ぎます。また民間医療機関には、市民に身近な地域密着型の「かかりつけ医」としての機能をこれまで以上に発揮して頂けるよう、情報共有と連携を進めます。
⒊ 財政再建への取り組み
まず第一に、現在の歳出構造の見直しを進めます。手法として、民間・市民の視点による行政事業の仕分けを行います。「民間が取り組むべき事業」「行政が取り組むが効率化の余地が大きい事業」「これまで通り行政が取り組むべき事業」に分け、歳出の削減と効率化を進めます。
第二に、総額1500億円に達する債務(市債残高および債務負担行為)の早期軽減を、新規起債の極小化により目指します。一般会計だけでなく、下水道会計など特別会計における財務体質の建て直しも進めます。それにより、公債費と繰出金の早期圧縮をはかります。
第三に、市役所にとっての最大の資源である職員の「資源効率」を極大化します。現行の職員体制で、市民生活へのサービス貢献度を最大化できるよう、職員の適性と能力に応じて配置を見直し、個々の職員の「やる気」とパフォーマンスの最大化を目指します。
⒋ 広域合併へのスタンス
恵まれた環境と地勢を誇る県西地域の総合力を発揮する意味で、また行政コストを下げる意味でも、2市8町エリアの広域合併の意義は大きいでしょう。ただし、市民生活のレベルでの様々な不安定要素(福祉、医療、教育など)をある程度解決し、少子化・超高齢化社会への基礎的な備えを済ませることが前提条件となります。平成22年度という現行法の期限に囚われず、当面は自治体間の経済活動連携を先行させ、交流実績と信頼を積み重ねながら、民意の十分な確認を経て進めるべきでしょう。